映画という広告
「実写化決定!」という謳い文句を何度見ただろう。
去年辺りからだろうか、マンガの実写化が増え始めたのは。
数字を取ったわけではないので、どれぐらいマンガの実写化が増えたか等々はわからないのだけれども、恐らく皆増えたと感じていると思う。
「銀魂」を映画化は驚いた。
「ジョジョ」も驚いた。
「斉木」は、まあ、やるんだっていうか。
ともあれ、集英社の勢いが止まらない。
マンガを実写化する時には必ずと言っていいほど、原作ファンからの阿鼻叫喚が漏れる。
「原作の世界観が壊れる」だの「再現できない」だのと実写化が決まった時点で不満が溢れるのはよくあることだ。
ただ、その意見はいわば受け手としての意見でしかないわけである。
出版社の側から考えてみると、実写化も含めたメディアミックスにデメリットはないように思える。
実写化映画の内容がどうあれ、実写化された時点でもう成功なんじゃないか。
マンガにとってメディアミックスはもはや日常茶飯事で、さもなくば業界を生き残れないのではないかと思われるほどの定石というか、目指すべき場所という感じである。
人気が出たらアニメ化(後に映画化)、小説版やファンブックの刊行、ドラマや映画で実写化というのはメディアミックスの定番である。
その進展度合いによってその作品の人気度が測れると言ってもいい。
そこまでメディアミックスを重視するのはなぜか。
それは「作品の知名度を上げる」ということで説明がつくのではないか。
出版社における第一義の目標は当たり前だが本を売ることだ。
雑誌が売れて単行本が売れて会社も作家も儲かるのであればもうそれで十分といっていい。
宣伝などせずに売れるのであれば尚良い。
しかし、そこまで甘くないのが出版社を取り巻く状況だ。
雑誌の売上は落ち込み、何もしなくても売れる時代はとうの昔だ。
本を売るためにどの会社も四苦八苦している。
内容の充実を図ることはもちろん、如何に知らしめ興味を抱いてもらえるか、つまり宣伝にもとりわけ注力してきたはずだ。
その宣伝の1つとしてメディアミックスが選ばれているというわけだ。
宣伝は「今まで作品を知らなかった人に対して」知らしめることに意義がある。
マンガ好きの人には知られていてもそれだけでは小さい。
もっとマンガ好き以外にも作品の存在を知ってもらい、手に取ってもらうことを目的としているのである。
メディアミックスされているということは人気があることの裏返しである。
つまり、メディアミックスされたことをアピールすることで、受け手に作品の人気度を知らしめているのである。
帯やポスターに実写化を堂々アピールする。
それを見た受け手はその作品について大した情報がなくても「実写化されるのだから面白いのだろう」と勝手に結びつけてくれる。
そして、本を買ってくれれば、メディアミックスの効果アリということだ。
「銀魂」の作者も「劇場版 銀魂」に際して寄せていたコメントにも見られたが、「作品を多くの人に届ける」ことがメディアミックスに可能だということだ。
マンガ好きの人に留まらず、より大衆に届ける力がメディアミックスにはあるのだろう。
作者には作品使用料しかお金が入らないというが、メディアミックスによって本が売れ、その印税分で結局プラスになるという考えをしてるのかもしれない。
いずれにせよ、出版社にとってメディアミックスは本を売るための宣伝手法の一つであって、話題性を出すことが何よりも求められるのではないだろうか。
作品使用料が安すぎるとか愛のある映画化を!とかはまた別のお話。