緩急乱高下「ザ・ファブル」
スーパーなアクションで極まったシリアスに真顔シュールギャグでジェットコースターの如くギャップを乱高下させられるアクションコメディとしては最高の映画だったのではないだろうか。
最近の岡田准一と言えば、重厚感ある役柄も多い上、アクションは超一流。その演じるキャラがほとんど笑わない無表情な(ジャッカル富岡を除く)最強の殺し屋・佐藤アキラとなれば自然とシリアスで硬派な映像になりそうであるが、その予想をうまく逆手にとって下らないシュールなコメディで突き落としては引っ張り上げてを繰り返すという構造。この構造自体は他の映像作品にもよく見られるものだが、これを岡田准一にやらせてしまうという発想が最高だった。
偶然にもこの日読んだこの記事文中にもあるのだが、
岡村
「いまいちピンとこない人もいるかもしれませんが、ここに出てくる監督や選手のエピソード、実際にあったことばかりなんです。選手の後年のインタビューなどを調べた上で書かれた、リアリティのある話なんですよ。タイムリープできるというフィクションと、リアルな事実が組み合わさっている、かなり稀有な作品といえます。『シン・ゴジラ』もそういう作品で、ゴジラ自体はフィクションだけど自衛隊のシミュレーションはリアルに描かれているじゃないですか。」
林
「嘘を二個つかない、かつ嘘じゃない部分はリアルに描く。だからこそ嘘が面白くなるわけで、嘘が複数あると途端にとっちらかって読者の興味が薄れちゃうんです。面白い物語の基本ですね。」
岡村
「そう、「大ウソ×超リアル」のバランスが絶妙なんです。そもそも阪神という球団の恐ろしいところは……」
この「嘘じゃない部分はリアルに描く」を極めているのだ「ファブル」は。
アクションシーンはリアルというか超一流。しかも、岡田准一はスタントなしでのアクション。脳裏にミッションインポッシブルのトム・クルーズが浮かぶ。身長も近いし、もはや岡田准一は「和製トム・クルーズ」である。それにドがつくほどの滑りギャグを混ぜ合わせたらもう乱高下もいいところである。アクションで度肝抜かされ、ギャグで息を吐かせてをテンポよく繰り返される。ゴミ処理場に乗り込む時、壁を登っていく岡田准一はヤバかった。一人で急にSASUKEを始めるもんだから、映画館内で「えっ…」と誰かの声が漏れた。ついにアクションのターンだなと思い身構えると「なんでおれもやねーん」でまた真っ逆さまに落とされる。
そんな高低差が非常にある「ザ・ファブル」は非常に満足度が高くなるのも頷ける。
岡田准一はアクションをして、笑いを取り、全裸になって、と八面六臂の活躍。
木村文乃はアホ楽しそうだが、最後に「本当に強い」ことを証明して見せたのは原作へのリスペクトも感じた(あれがないとただの酒の強いアホ女になってしまう)。
山本美月は本当に幸薄くて関西弁で最高。柳楽優弥に同情するわけじゃないが、拉致されてからの山本美月は見ものである。
安田顕は最後に弟分を殺すことで、社長たる所以を見せつけていた。あのガレージの件(コント)は間が秀逸。
福士蒼汰は一護なんかよりもセクシーでイケメンであったのでは?演技も気にならない。
柳楽優弥は相変わらず変態。
向井理は目を見開いた時の悪役っぷりは中々どうして堂に入っておられる。実はこの映画イケメンが結構多いということに気づかされる。
そして、シュールコメディには必ず居合わせる佐藤二朗。もはやポジションを確立させた感がある。大体福田雄一のせい。
スタッフロールに目を向けると、途中
「ジャッカル富岡 振付考案」
「ジャッカル富岡 ネタ考案」
と一人ずつスタッフが配されていることに気づき笑ってしまう。
そして、音楽にはCRCK/LCKSの小西遼のクレジットも。劇伴も手がけるとは手広く活動している。
装飾の欄に「グラフィック社」とあったが、あのグラフィック社?出版社の?
ギャップが大事とは言うが、そのギャップを出来るだけ大きく大きくとることで、アクションとコメディをより際立たせたことが面白さの最大の要因。
原作を知っていても知らなくても満足することは請け合いではないだろうか。